1 山梨県循環器疾患:紹介基準

この度、開業医の先生方向けに循環器疾患の紹介基準例を示すことにしました
あくまで参考例です
循環器が専門でない病院の先生方にも参考になります
日本循環器学会のガイドラインを参考にして、できるだけわかりやすくしました

「基幹病院」の定義は、現時点で、日本循環器学会の専門医が3名以上在籍し、24時間、急性心筋梗塞に対する再灌流療法が可能な病院としました
山梨県では、以下の病院が基幹病院になります

  • 山梨県立中央病院
  • 山梨大学医学部附属病院
  • 市立甲府病院
  • 甲府共立病院
  • 甲府城南病院
  • 山梨厚生病院
  • 富士吉田市立病院
  • 山梨赤十字病院

その他、循環器外来を開設している病院にご紹介ください
事前に循環器疾患に対応可能か確認すると良いです

各循環器疾患、所見による紹介基準

虚血性心疾患

虚血性心疾患は、急性冠症候群(ACS)、非ACSに分けて、考えます

ACSが疑われる場合は、冠動脈造影および冠動脈形成術が可能な循環器基幹病院に直ちに紹介が必要です

ACSは、ST上昇型急性心筋梗塞、非ST上昇型急性心筋梗塞、不安定狭心症に分類されます

救急車で搬送する必要があります

ショックの場合、補助循環を有する施設への搬送が望ましいです

*補助循環を完備している施設は、山梨県立中央病院、山梨大学医学部附属病院

*心電図を事前に搬送先にFAXできればよい

*紹介状添付資料

ACSの紹介基準

持続する胸痛があり、心電図変化(ST上昇または低下)を認める

持続する強い胸痛があり、原因が不明な場合

非ACSの紹介基準

狭心症の症状を認め、心電図変化が確認されている

狭心症の症状を認めるが、追加の検査ができない

*追加の検査:負荷心電図、ホルター心電図、心エコー図等

*冠動脈CT、心筋シンチで評価後、必要があれば、冠動脈造影を施行します

心臓弁膜症

心臓には、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁の4つがあります

それぞれの弁で、狭窄および逆流を起こすことがあります

日常診療で多い弁膜症は、大動脈弁狭窄症、僧帽弁逆流症、大動脈弁逆流症です

僧帽弁狭窄症、三尖弁逆流症も時々います

肺動脈弁疾患は、先天性心疾患のケースで問題になりますが、遭遇することは稀です

心不全症状が主な症状となります

心雑音は心臓弁膜症を強く疑う所見です

症候性の心臓弁膜症は、原則、治療対象となりえますので、ご紹介ください

外科治療となる場合も術前検査が必要ですので、循環器内科にご紹介ください

現在、一部の弁膜症はカテーテル治療が可能となっています

高齢でも認知症がなく、自立していて、治療希望がある場合、基幹病院にご紹介ください

心雑音

明らかな心雑音を聴取し、その原因が明らかでない場合、循環器内科の受診が必要です

症状がある場合とない場合があります

心電図や心不全マーカー(BNP/NT pro BNP)のデータがあれば、参考になります

心エコー図検査を行い、確定診断およびその後の方針を決定します

結果と対応は、以下のような場合が考えられます

無害な場合

基礎心疾患があるが、まだ侵襲的な治療を要さず、定期的な観察が必要な場合

基礎心疾患があり、まだ侵襲的な治療を要さないが、薬物治療が必要な場合

基礎心疾患があり、侵襲的な治療が望ましい場合

基礎心疾患が極めて進行しており、侵襲的な治療が困難な場合

基礎心疾患として、弁膜症(大動脈弁狭窄症、僧帽弁逆流症、大動脈弁逆流症、三尖弁逆流症など)、心筋症(閉塞性肥大型心筋症)、先天性心疾患(心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存、肺動脈弁逆流・狭窄など)などがあり、治療対象となりえます

心不全

①かかりつけ医から基幹病院(専門医・専門医療機関)への紹介

息切れ、浮腫等の慢性的な心不全症状

BNP/NT pro BNP高値

明らかな急性心不全

②基幹病院(専門医・専門医療機関)からかかりつけ医への逆紹介

心不全が代償されている

処方内容が固定されている

心不全入院が1年以上ない

患者が希望している

心筋症

筋症は、心筋の異常に起因する心疾患です

現時点で、特発性と二次性に分けられます

表現系として、拡張型心筋症と肥大型心筋症が良く見られます

その他、拘束型心筋症や不整脈源性右室心筋症等がありますが、極めて稀です

家族性、遺伝性の症例があり、突然死の家族歴がある場合、予後不良です

心不全症状、狭心症症状、不整脈の症状のいずれも出る可能性があります

症候性の心筋症は、原則、治療対象となりますので、基幹病院にご紹介ください

心筋症は、無症状でも治療対象となりえるので、一度は基幹病院に紹介してください

心電図異常

心電図異常は、異常所見の種類が多く、紹介基準を明示することが困難です

基幹病院にTELまたはFAXして、ご相談ください

緊急性はない(無症状の)場合、通常の紹介でも構いません

心電図異常の内容に加えて、以下の情報が必要になることがあります

  • 年齢・性別
  • 心電図異常の種類
  • 症状の有無
  • 基礎の疾患
  • 処方内容
  • 心臓病の家族歴、特に突然死

頻脈性不整脈

動悸、めまい、眼前暗黒感、失神等の発作性の症候性頻脈は基幹病院にご紹介ください

発作性心房細動、発作性心房粗動、心房頻拍、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動等

発作時あるいは発作時の心電図が確認されている場合:心電図を添付してください

基幹病院での対応

発作時:薬物あるいは電気的除細動による不整脈発作の停止:

非発作時:カテーテル焼灼術を検討

カテーテル焼灼術が可能な病院は、2025年度の時点で、下記の病院です

  • 山梨県立中央病院
  • 山梨大学医学部附属病院
  • 山梨厚生病院
  • 甲府城南病院
  • 甲府共立病院

肺高血圧

肺高血圧は、難病かつ希少疾患であり、肺高血圧を専門的に見ている循環器専門医が在籍する循環器の基幹病院での診療が望ましいです

肺高血圧の診断アルゴリズムは確立していますが、診療所レベルで診断することは困難です

指定難病であり、診断・重症度評価のため、決まった検査(*)が必要になります

*CT(HRCTと造影)、肺換気・血流シンチ、呼吸機能検査、その他

症状は、心不全や呼吸器疾患に伴う一般的な症状です

失神を伴う症例は、突然死リスクもあり、予後も悪いです

肺高血圧

BNP/NT pro BNP

BNP/NT pro BNPは優れた心不全のバイオマーカーです

BNPは血漿、NT pro BNPは血清で測定されます

腎障害がある場合、BNPのほうが良いです

下記に心不全学会の推奨表を掲載します

75歳以上は、1年に1回、計測しても良いです

BNP/NT pro BNP

以下の場合、基幹病院の循環器専門医を紹介してください

前心不全~心不全で、うっ血によると思われる症状や所見がある場合

心不全、高リスク心不全で、うっ血によると思われる症状や所見がある場合

心不全、高リスク心不全で、特に症状や所見はないが、原因がわからない場合

心不全、高リスク心不全で、原因が判明しているが、心不全の管理が困難な場合

心房細動

心房細動の患者は多く、心不全の原因疾患として、高血圧に次いで多いと考えられます

また脳梗塞を含む血栓塞栓症の原因にもなり、抗凝固療法が必要になります

心房細動は下記のように分類されます、無症状でも一度、循環器専門医(可能なら、不整脈専門医)と治療方針の相談が望ましいです

カテーテル焼灼術が普及し、洞調律化が可能であれば、心不全リスク、脳梗塞リスクとも大きく減らすことができます、また塞栓症リスク、出血リスクともに高い場合、経皮的左心耳閉鎖術も考慮されます

 

発作性心房細動:持続7日以内の一過性、発作性の心房細動

持続性心房細動:心房細動の持続が7日以上1年以内

長期持続性心房細動:心房細動の持続が1年以上

永続性心房細動:長期持続性心房細動のうち、洞調律化が困難なもの

心房細動

高齢者、持続性心房細動・長期持続性心房細動に対するカテーテル焼灼術の適応に関しては、施設間・術者間による差があります

カテーテル焼灼術を行わないあるいは希望しない場合、従来通り、薬物による抗凝固療法や心拍数調整療法を継続することになります

頻脈性不整脈

動悸、めまい、眼前暗黒感、失神等の発作性の症候性頻脈は基幹病院にご紹介ください

発作性心房細動、発作性心房粗動、心房頻拍、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動等

発作時あるいは発作時の心電図が確認されている場合:心電図を添付してください

 

基幹病院での対応

発作時:薬物あるいは電気的除細動による不整脈発作の停止:

非発作時:カテーテル焼灼術を検討

カテーテル焼灼術が可能な病院は、2025年度の時点で、下記の病院です

  • 山梨県立中央病院
  • 山梨大学医学部附属病院
  • 山梨厚生病院
  • 甲府城南病院
  • 甲府共立病院

成人先天性心疾患(ACHD)

成人先天性心疾患は以下の4つに分類され、ACHDを専門とする医師の診療が必要です

原則、生涯にわたる診療が必要であり、フォローアウトにならないようにする必要があります

山梨県内では、山梨大学医学部附属病院(ACHD初診外来:水・木)、山梨県立中央病院が、日本成人先天性心疾患学会により、「成人先天性心疾患連携修練施設」に認定されています

  1. 幼少期に先天性心疾患の診断を受けた患者
  2. 幼少期に先天性心疾患の治療を受けた患者
  3. 成人期に先天性心疾患の診断を受けた患者
  4. 成人期に先天性心疾患の治療を受けた患者

 

*1‐4いずれも無症状なことが多いです

*特に2でフォローアウトしている中高年の中に比較的重症例(本来は介入が必要)がいます

 

対応は以下に分類されます

経過観察、半年あるいは1年ごと

継続した薬物治療が必要

侵襲的治療の適応のための評価が必要

進行期・終末期で、侵襲的治療が困難

症状や検査所見に関わらず、一度、ご紹介ください

自覚症状

環器疾患の主訴、自覚症状には以下のようなものがあります

緊急性がありそうな場合、症状が強い場合、日常生活に支障がある場合、原因がはっきりしない場合等、循環器内科の受診が必要と考えられます

 

心不全の症状、虚血性心疾患の症状、不整脈の症状

  • 息切れ、呼吸困難、起坐呼吸
  • 浮腫・体重増加
  • 倦怠感
  • 安静時・労作時の胸部圧迫感、胸痛
  • 動悸
  • めまい、眼前暗黒感、意識消失

徐脈性不整脈

侵襲的な介入(ペーシング治療)が必要な徐脈(目安は50未満)は、症候性(症状のある)徐脈で、以下のようなものがあり、基幹病院の循環器内科に紹介が必要です

 

洞不全症候群

房室ブロック:高度、3度(完全):突然死リスクもあり、治療対象

徐脈性心房細動:心房細動で、極端に脈が遅いもの

慢性の3束(または枝)ブロックは、将来、ペースメーカーになる可能性が高いです

 

めまい、眼前暗黒感、失神等の極端な徐脈による症状

息切れ、浮腫等の心不全による症状

閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症(ASO)は、末梢動脈疾患(PAD)に分類され、主に下半身の動脈の動脈硬化により、狭窄や閉塞となり、下肢の阻血症状を呈します。最近は、下肢末梢動脈疾患(LEAD : lower extremity artery disease)と呼ばれます

*間欠性跛行は、脊柱管狭窄症のような整形外科的疾患との鑑別を要します

症候性(間欠性跛行)で、血管形成術やバイパス術のような侵襲的治療の対象となる場合があり、紹介が必要になります

*重症下肢虚血(CLTI)で、安静時疼痛あるいは潰瘍性病変は、紹介の対象であり、フットケアチームによる介入が必要です

*糖尿病の足壊疽も治療対象になりえますが、治療成績は不良です

下記の赤枠下肢症状ABI<0.9)が紹介基準となります

閉塞性動脈硬化症

日本循環器学会日本血管外科学会 2022 年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン

高血圧

  1. かかりつけ医から専門医・専門医療機関への紹介
    治療抵抗性・難治性高血圧:3剤以上の降圧剤を服用しても目標(*1)に達しない
    若年性高血圧:35歳以下の高血圧や妊婦の高血圧
    二次性高血圧:下記の疾患(*2、3)に伴うもの、診断は容易ではない
    臓器障害のある高血圧:特に慢性腎臓病や心肥大(心電図異常)
     

    *1 血圧コントロールの目安:次項を参照、ガイドライン(JSH2025)参照

     

    *2 二次性高血圧
    腎臓の病気:腎実質性高血圧、腎血管性高血圧など
    内分泌系の病気:原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫など
    血管の病気:大動脈炎症候群、動脈硬化など
    薬剤:消炎鎮痛剤、ステロイド、一部の漢方薬など
    その他:睡眠時無呼吸症候群、 一部の遺伝性疾患

     

    *3 内分泌検査を要する可能性のある症例は、内分泌内科専門医がいる基幹病院への紹介が望ましい

    2026年度より、山梨大学医学部附属病院において治療抵抗性高血圧に対する腎交感神経デナベーション(高血圧に対するカテーテル治療)が導入予定(月曜日の午後に高血圧専門外来)

  2. 専門医・専門医療機関からかかりつけ医への逆紹介
    血圧コントロールが安定した場合
    本人が同意した場合
    高血圧コントロールの目安:例)
    4勝3敗の法則
    勝ち越しは許容範囲、負け越しはコントロール不良
    全勝はコントロール良好で、薬剤減量も考慮される
    最大の長所は、患者の理解が得やすい
起床時 収縮期 146 136 132 140 128 144 122
拡張期 82 79 84 86 70 88 68
脈拍数 回/分 76 72 74 76 82 70 68
就寝時 収縮期 132 126 126 132 118 130 116
拡張期 74 76 78 82 74 82 66
脈拍数 回/分 78 74 76 72 74 72 66
体重 kg 52 52 53 52 51.5 52 52
 
起床時 収縮期 146 162 152 140 176 146 136
拡張期 82 90 84 86 100 92 82
脈拍数 回/分 80 82 78 76 74 72 70
就寝時 収縮期 132 154 152 136 142 138 136
拡張期 74 94 92 88 88 90 86
脈拍数 回/分 88 90 78 104 76 74 82
体重 kg 63 62 62 62.5 63 63 62.5

目標値を設定(例では、140/90mmHgに設定)、目標値の変更が可能
目標値より高い場合、赤字で記載し、1週間で勝敗を集計する
例では、上段は、4勝3敗で勝ち越し、下段は、1勝7敗で負け越しとなる
負け越しでは、コントロール不良の判断で、薬剤強化を検討する

Yamanashi Project 監修:山梨大学医学部附属病院循環器内科 中村貴光

大動脈瘤

大動脈疾患の治療は以下に分かれます

内科治療、血管内治療、外科治療

現在、大動脈疾患の治療が可能な施設は、山梨県立中央病院と山梨大学医学部附属病院の2施設のみです

  1. 腹部大動脈瘤:下記、赤枠で紹介する

    大動脈瘤

    また介入の時期、フォローの時期をやや早め(赤で修正)に設定しています

  2. 胸部大動脈瘤:下記、赤枠で紹介する

    大動脈瘤

    腹部、胸部いずれの場合も生活習慣病(特に高血圧)の管理と禁煙指導(黄色枠)を徹底

参考:日本循環器学会/ 日本心臓血管外科学会/ 日本胸部外科学会/ 日本血管外科学会合同ガイドライン
2020 年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

脂質異常症

以下の脂質異常症は専門施設での診療が望ましい

家族性高コレステロール血症:診断基準(下記)

難治性脂質異常症:スタチンを含む複数の資質低下薬の投与にも関わらず、目標を達成できない

原発性脂質異常症

*著明な高LDL-C血症、LDLアフェレーシスが必要と考えられる症例

*著明な高TG血症:TG 500mg/dl以上

*著明な低HDL-C血症:HDL-C 30mg/dl未満

*遺伝学的検討が必要な症例、遺伝的要素が濃厚な症例

日本動脈硬化学会指定の家族性高コレステロール血症の治療施設・医師は下記

山梨大学医学部附属病院循環器内科 中村貴光

*遺伝学的検査(原発性脂質異常症14疾患)が可能

山梨赤十字病院内科(循環器) 正司真

脂質異常症

成人家族性高コレステロール血症診療ガイドラインフォーカスアップデート2025

大動脈解離

大動脈疾患の治療は以下に分かれます

内科治療、血管内治療、外科治療

現在、大動脈疾患の治療が可能な施設は、山梨県立中央病院と山梨大学医学部附属病院の2施設のみです

急性大動脈解離は全例、緊急入院となりますので、疑われる場合は、紹介してください

急性大動脈解離の紹介基準:赤枠内

大動脈解離

*付記:慢性大動脈解離のフォロー

大動脈解離

参考

大動脈解離

参考:日本循環器学会/ 日本心臓血管外科学会/ 日本胸部外科学会/ 日本血管外科学会合同ガイドライン

2020 年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

2 心不全相談

心不全やその他の心疾患に関する相談を受け付けます。
確定診断、処方内容、紹介すべきか否か、今後の方針等、急ではないが、ちょっと聞きたいという場合の相談です。
なお緊急での診察依頼等は最寄りの基幹病院に直接、電話でご相談ください。

E-mail:ymuc-as@yamanashi.ac.jp