心不全ネットワーク設立の経緯

1 心不全とは?

心不全は、日本循環器学会のガイドラインにより、一般向けには、「心不全とは,心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮める病気です.」と定義された。またより専門的には、「なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群.」とも定義されている。すべての心疾患が、心不全の原因となりうるが、一般的には、虚血性心疾患、心筋症、弁膜症、不整脈等が心不全の原因となることが多い。

2 心不全パンデミック

現在、日本の粗死亡率の推移は下記のグラフのようになっており、がんが1位、心疾患が2位であり、どちらも増加傾向を示しています。

心不全パンデミック

日本循環器学会のJROADによる調査データで、近年の心疾患の内訳を見てみると、急性心筋梗塞、心不全ともに増加傾向ですが、その増加の割合、全体数ともに心不全が増加していることがわかります。

日本循環器学会ホームページ

 

日本循環器学会ホームページ

また心疾患における死因の内訳においても心不全の占める割合が多くなっています。

厚生労働省. 人口動態調査. (https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html). 2020年1月8日閲覧.

厚生労働省. 人口動態調査.
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html). 2020年1月8日閲覧.

このように心不全患者の増加が著しく、2035年に120万人超とピークとなることが予想されており、その後は、絶対数は減少するものの、高齢化を反映して、相対的な割合はその後も増加すると考えられています。心不全は、入退院を繰り返しながら健康寿命の低下にも大きく関与し、医療従事者の負担や医療費の厖大化に大きく影響しています。現在のこのような状況は、「心不全パンデミック」と称されています。

心不全パンデミック

 

3 脳卒中・循環器病克服5か年計画

このような超高齢化社会と脳卒中・循環器病の増加およびそれに伴う健康寿命の低下に対する対策として、2016年に日本脳卒中学会と日本循環器学会が合同で、「脳卒中・循環器病克服5か年計画」を立てました。この計画は、脳卒中と循環器病の年齢調整死亡率を5年で5%減少させること、健康寿命を延伸させることの2つを大目標に掲げ、人材育成、医療体制の充実、登録事業の促進、予防・国民への啓蒙および臨床・基礎研究の強化の5つの戦略を立てています。

ストップCVD

4 循環器病対策基本法

日本脳卒中学会と日本循環器学会による脳卒中・循環器病克服5か年計画が基礎となり、2018年に循環器病対策基本法が成立しました。がん対策基本法に遅れること、12年です。現在、この法律に基づいて、各都道府県において、独自の循環器病対策推進計画が策定・実行されており、山梨県においても独自の計画が立てられています。

循環器病対策基本法

 

5 心不全ネットワーク

心不全パンデミックに代表する高齢者の心不全診療においては、後述する多職種・地域連携による包括的疾患管理が必要となる。現在、日本国内において、循環器病対策基本計画に基づき、各都道府県で、心不全に対する様々な形の多職種連携、地域医療連携が行われている。このような経緯を経て、山梨県においても「山梨県心不全ネットワーク」を設立するに至りました。