1 心不全とは?

心不全は、日本循環器学会のガイドラインにより、一般向けには、「心不全とは,心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮める病気です.」と定義されました。またより専門的には、「なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群.」とも定義されています。すべての心疾患が、心不全の原因となりえますが、一般的には、虚血性心疾患、心筋症、弁膜症、不整脈等が心不全の原因となることが多いです。自分の基礎の心疾患がどういう病名か、担当医・主治医に確認しておきましょう。

心不全とは?

心不全は、その重症度・進行度によりstageAからstageDまで分類されています。癌のstageⅠ~stageⅣと同じです。自分がどの段階であるか?担当医・主治医に確認しておきましょう。

心不全には増悪因子となる他の併発疾患があり、それらを並行して治療する必要があります。

心不全はstageC以降になると、入退院を繰り返し、緩徐に身体機能(生活活動度や認知機能)が低下していきます。stageC以降は、いかに入院を予防できるか?が非常に重要となってきますが、そのためには生活習慣を含めた包括的管理(栄養、リハビリ、服薬等)が必要治なります。そのためには患者さん自身の理解や努力が必要となります。

2 受診基準

循環器病の中でも急性心筋梗塞や心不全、脳卒中は、急性疾患であり、治療が早ければ、早いほど、生命予後が良くなるばかりでなく、健康寿命の低下を阻止することが可能となります。逆に言えば、早いタイミングで治療を受けないと、急性期に致命的となるだけでなく、仮に致命的とならなくても生活の質を大きく落とすことになります。

1狭心症による自覚症状
労作(早く歩く、階段を上る、重いものを持つ等)で、胸痛、胸部圧迫感、胸部違和感、動悸、息切れ等が誘発され、安静で改善する場合、狭心症が疑われます。
循環器専門医を受診しましょう。
安静にすると改善するからと受診しない方が居ます。結果、急性心筋梗塞を発症してしまう方が、時々います。
高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールが高いなど)、喫煙者、家族歴(家族の中に狭心症、心筋梗塞、突然死等の方がいる場合)がある場合は、特に注意が必要です。
狭心症の中には、安静時、特に夜間や早朝に起きやすい冠攣縮性狭心症という狭心症もあります。この狭心症でもまれに心筋梗塞や突然死を起こすことがありますので、注意が必要です。

2心筋梗塞による症状
上記の胸痛、胸部圧迫感、胸部違和感、動悸、息切れが30分経過しても改善せず、持続する場合は、夜間・深夜であっても救急車を要請して、医療機関を受診しましょう。通常、前兆がある場合は、その前兆より症状が強くなります。冷汗を伴う場合、肩や手、あごに痛みが放散する場合、心筋梗塞の可能性が高いです。背部痛や上腹部痛のこともあります。高齢者の場合、訴えが弱いが、反応が悪くなる場合もあります。前兆が全くなく、初回の発作が発症のこともあります。
夜間に発症し、翌日まで我慢して、治療時期を逸してから来院される患者が以前より多い印象です。救急車を呼ぶのが恥ずかしいという方も中には居ますが、それも結果的には、本人、周りの方ともに不利益のほうが大きいです。

3心不全による症状
すでに心疾患を診断されている方と心疾患の診断を受けたことがない方とやや注意が異なります。また上記の狭心症や心筋梗塞に比べて、症状の種類は多岐にわたります。心不全の症状は主に下記となります。

日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

最も典型的な自覚症状は、息切れ、呼吸困難です。このような症状が出現し、徐々に悪化する場合は、早めに循環器専門医を受診しましょう。中には、夜間に起坐呼吸(横になると呼吸が苦しく、座ると症状が軽くなる)となる場合がありますが、その場合は、急性左心不全の症状の可能性が高いです。また不穏や意識障害がある場合は、より重症です。これらの場合、夜間でも救急車で医療機関を受診してください。

すでに心疾患・心不全で加療をしている場合、体重増加は、心不全増悪の予兆となります。体液貯留が強くなり、浮腫が出現し、体重が増加します。2kg以上の増加がある場合、主治医に早めに相談しましょう。中には、定期受診日が、数日後であったり、翌週でもう少しであったりという理由で、受診しない方が居ますが、いったん悪くなるサイクルに入りますと、治療にはより時間がかかってしまいます。前回(1年以内くらいが目安)、入院していることがある場合、退院時の体重が指標となります。
慢性心不全で加療を受けている方は、セルフモニタリングが心不全増悪を防ぐ手段となります。心不全モニタリングや心不全手帳の欄を参考にしてみてください。

3 心不全手帳

心不全のためにモニタリングした医学的指標を記録する媒体として心不全手帳が使われます。現在、心不全学会が作成した「心不全手帳」を使用しています。
将来的に山梨県のオリジナルの心不全手帳の作成も考えています。
血圧、脈拍、酸素飽和度、体重等に加えて、息切れ、呼吸困難、食欲不振、むくみ等の自覚症状を記録し、心不全増悪する前に予期し、病院受診を奨めるものです。心不全入院を回避することで、生命予後だけでなく、健康寿命の延伸にも寄与します。

心不全学会の「心不全手帳」は、以下のリンクからダウンロードが可能です。
http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/shinhuzentecho.html

血圧手帳や糖尿病の手帳はご存じの方も居るかもしれません。この手帳の種類が多すぎることが、患者あるいは医療従事者からも負担となることも問題視されています。この点に関しても現在、良い方法を検討中です。

4 研究に関して

臨床研究とは、人を対象として行われる「医学系研究」のことです。
医学系研究は、生命科学研究や基礎医学研究から、治験までの広範囲に及びます。
病気の予防・診断・治療方法の改善や病気の原因の解明、患者様の生活の質の向上を目的として行われます。

厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」に定めるところによると人を対象とする医学系研究とは、人(人の試料・情報を含みます)を対象として、傷病の成因、病態の理解、傷病の予防方法の改善又は有効性の検証、医療における診断方法及び治療方法の改善又は有効性の検証を通じて、健康に関する様々な事象の頻度及び分布、それらに影響を与える要因に有用な知識を得ることを目的として実施される活動と定義されています。
人を対象とするものが「臨床研究」ですが、個人を特定できる試料又は情報に当たるかどうかは、厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」に定めるところによります。
臨床研究では、長時間かけて発症する病気や、稀にしか見られない病気も対象になります。日常の診療では、傷病の診断や治療方針の決定、経過観察のために様々な検査を実施しています。検査では、各種の生体試料(血液、尿、喀痰、胸水、腹水、洗浄液、髄液、生検組織、摘出・切除組織など)を採取することが多いですが、これらの試料は「人を対象とする医学系研究」でも大変貴重です。
そのため医療の進歩に貢献することを目的として、検査後の残余試料やこれらに由来するものを採取・保管し、診療情報との関係を解析する「人を対象とする医学系研究」に、将来を含め、使用することへの多くの方々のご理解・ご協力が必要となります。
残余試料を含む試料の採取・診療情報の収集とその使用につきましては、皆様のご同意を得ると共に、人格や個人情報の厳重な保護、更にどのような研究に使用するかにつき、倫理審査委員会で厳正に審査します。 使用できるのは審査で認められた場合においてのみとなります。また、同意された後も、いつでも同意を撤回することが出来ます。
臨床研究、臨床試験、治験は、下記の図に示すような関係にあります。

研究に関して

オプトアウトとは
通常、臨床研究は文書もしくは口頭で十分な説明を行い、患者様からの同意(インフォームド・コンセント)を得て行われます。これを「オプトイン」と言います。
なお、同意には、主として「文書による同意」と「口頭による同意」がありますが、臨床研究に関わる同意は、文書による明確な同意を基本とします。(一方、口頭による同意を取得した際は、その旨を遅延する事なく診療録に記載します。)
臨床研究のうち、観察研究(対象となる患者さんの診療データのみを匿名化して用いる研究)においては、患者様に対して研究を目的とした積極的な侵襲や介入がないため、国が定めた倫理指針に基づき、「必ずしも対象となる患者様お一人ずつから、臨床研究ごとに直接同意を得る必要はない」とされております。しかし、「研究の目的を含めて、研究の実施についての情報を通知または公開し、さらに可能な限り拒否の機会を保障する事が必要」とされており、このような手法を「オプトアウト」といいます。

現在の標準治療は、ほとんどすべてガイドラインの基づいた診療がされています。ガイドラインは、臨床試験の結果をもとに作成され、これらのガイドラインに従った診療をエビデンスに基づいた診療(Evidence Based Medicine)と読んでいます。これらのエビデンスやガイドラインは、臨床研究の結果を基に作成されます。欧米では、この臨床試験が非常に大規模に行われていますが、日本はまだ大きく遅れています。実際に日本のガイドラインの大半は欧米の臨床試験の結果を元に作成されているのが現状です。日本においても多くの基幹病院が患者様の協力を得て、臨床試験に参画しています。患者様の中には、研究と聞いて、非常に抵抗感を示される方もいますが、今、飲んでいる薬、今、受けている治療も元をただせば、必ず最初に薬を飲んだ、あるいは治療を受けた方が存在し、今までの研究により、それらが有効であることが医学的あるいは統計学的に証明されているからこそ、有効な治療として存在し、治療を受けることができるのです。すべての検査・治療が今までの厖大な医学的研究の結果をもとに最適化されてきました。